体内時計をコントロール――朝7時に起きて、夜10時に寝る 【科学的ライフスタイルのススメ 第1回】


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今年、平成26年1月に、イギリスのサリー大学が、

 生活リズムが崩れることで、「1400」もの遺伝子が傷つく

という研究結果を発表しました。不規則な生活習慣は、自律神経の働きやホルモン分泌のリズムを乱し、心臓病高血圧抑うつ疲労睡眠障害骨粗しょう症肥満がん、など、様々な問題を引き起こす原因となるそうです。

つい夜更かししてしまったり、仕事に追われて睡眠時間が極端に短くなってしまっていたり、怠惰な生活で昼夜が逆転してしまっていたりと、生活リズムが一定でなくなることはよくあることですが、この習慣を正さなければ、確実に寿命を削っているようです。

この発展した科学社会の中で、分かっていながら寿命を無駄に削って早死していては、大変な損です。もしかしたら大馬鹿者かもしれません。

乱れてしまったこの生活リズム、では、今から生活リズムを正すには、どうしたら良いのでしょうか?


■体内時計は遺伝子の中に実在する

人間には「体内時計」が存在します。一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。生活リズムが狂っている人は、この「体内時計」が狂っている状態にあります。

体内時計と言えば、「この時間になると俺の腹時計が鳴るんだ!」というような抽象的な使われ方をされてきた印象がありますが、実は、人間に限らず全動植物の「遺伝子」に、この体内時計が組み込まれていることが近年の研究で明らかになっています。

この遺伝子は、「時計遺伝子」と呼ばれています。

全身の、60兆以上の細胞ひとつひとつの中に「時計遺伝子」は存在し、それぞれが「約25時間のリズム」を刻んでいます。

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25時間?

1日の時間は、御存知の通り「24時間」です。時計遺伝子による体内時計は、1日の時間よりも約1時間も多くリズムを刻んでいることになります。

例えば、一日中家に引きこもり、部屋明かりだけでの生活を繰り返していると、体内時計が1時間ずつズレていき、その内、昼夜が逆転します。怠惰な生活を繰り返して、このようなことを体験した人も少なくないのではないでしょうか。私にもよくあります・・・・・・。これは実は、この時計遺伝子が約25時間でリズムを刻んでいることに関係しています。

この時計遺伝子によって全ての動植物は昼夜を認識していて、朝起きて、夜になったら眠くなるのは、この時計遺伝子の働きによるものなのです。睡眠、体温、血圧など、体内時計がそのリズムを整えています。活動に適した時間帯、睡眠に適した時間帯、食事が脂肪として蓄積されやすい時間帯など、全て「体内時計/時計遺伝子」が作り出しています

体内時計を無視して生活していると、そのリズムがどんどん狂っていってしまうのです。


■朝日を浴びて体内時計をコントロールする

私たちの生活リズム(睡眠、体温、血圧など)を整えている「体内時計」、実はコントロールすることが可能です。

時計遺伝子のリズムは「約25時間」、そのリズムのままに生活をしていたら、当然おかしくなってしまいます。体内時計を1日の「24時間」リズムにコントロールする、健康的な生活リズムを手に入れるには、このコントロールが非常に重要なのです。

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朝日」です。

朝起きて「朝日を浴びる」ことによって、体内時計を1日の始まりに「リセットする」ことが可能です。

脳の視床下部の視交叉上核(しこうさじょうかく)は、視神経が交叉する場所で、目から入った光の信号を感知します。目から入った「強い自然光=太陽光、朝日」は、視交叉上核に存在する1万個以上の時計遺伝子に直接働き掛けます。これがスイッチとなって、体内時計をリセットします。

リセットされると、その時間を基準に時計遺伝子は一日のリズムを調整し、眠りを誘発するホルモン「メラトニン」の分泌とその停止を行うようになります。「メラトニン」が分泌されるのは、体内時計のリセットから「約15時間後」で、朝7時に起きて朝日を浴びたのであれば、夜10時くらいに眠くなります。これが体内時計と睡眠の関係です。

体内時計のリズムを、こうして朝日を浴びることによってコントロールするのです。


■脳は朝日で、内臓は朝食でリセットする

朝、目が覚めたら、必ず「自然光=朝日」を浴びましょう。一般的な部屋の照明では、明るさが足りません。曇りや雨の日であっても、部屋の照明よりも外の光の方が遥かに良いのです。

ただし、最近は、太陽光に近い光を放つ高照度照明器具が存在しますが、これは太陽光の代わりになるようです。逆を言えば、高照度照明器具の存在は、夜に余計な明るい光を浴びてしまう機会をもたらしてしまいます。夜、太陽光に近い明るい光を浴びてしまうと、体内時計が夜なのに昼と勘違いして、狂ってしまうのです。気をつけましょう。

 1.朝、目覚める
 2.朝日をすぐに浴びる →体内時計をリセット! 1日が始まる!

ところで、実は、肝臓、腎臓、小腸など「末梢臓器の体内時計」は、朝日を感知し脳内でリセットした体内時計とは、「異なる時間」を刻んでいます。

脳の体内時計は「朝日を浴びる」ことでリセットされますが、内臓の体内時計は「朝食を摂る」ことでリセットされます。

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朝食を抜いてしまうと、内臓の体内時計がリセットされず、脳の体内時計とバラバラに時間を刻んでしまうので、リズムがお互いに乱されることになり、脂質の代謝異常や、ホルモンの分泌異常、果ては意欲や活力、記憶力の低下などを招いてしまいます。

朝起きて、朝日を浴びたら、1~2時間以内に朝食を摂る。

脳の体内時計とのズレを極力少なくするのです。人間の「時計遺伝子」を正確に作動させるには、「朝食を摂る」ことと「朝日を浴びる」こと、この2つがとても重要です。

 1.朝、目覚める
 2.朝日をすぐに浴びる →脳の体内時計をリセット! 1日が始まる!
 3.朝食を1~2時間以内に取る →内臓の体内時計もリセット!

深夜の食事など、不規則な時間帯の食事は、時計遺伝子のスイッチをおかしなタイミングで入れてしまう恐れがあります。また、満腹で、朝食が摂れず、朝のスイッチを入れられない悪循環に陥る恐れもあります。

朝、しっかりと朝食を摂って体内時計のリセットをしていれば、深夜にドカ食いしてしまう心配もありません。

子供の頃、母親から半ば精神論で「朝起きて、朝日を浴びろ」「朝食を摂れ」と言われて来ましたが、こうして科学的に証明されると、説得力が全然違いますね・・・・・・。


■朝日を浴びたら、15~17時間後に寝る

体内時計が重要なのは、「睡眠のコントロール」にもあります。適切な時間に、十分な睡眠が取れるかどうか、も重要なのです。

前述しましたが、朝日を浴びてから「15時間後」には、眠りを誘発するホルモン「メラトニン」が分泌されます。分泌量はどんどん上がっていき、1~2時間で分泌量はピークになります。

朝日を浴びてから15~17時間後、この時間帯に寝るのが最適だということになります。

 1.朝、目覚める
 2.朝日をすぐに浴びる →脳の体内時計をリセット! 1日が始まる!
 3.朝食を1~2時間以内に取る →内臓の体内時計もリセット!
 4.15~17時間後、寝る

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■朝7時に起きて、夜10時に寝る

おそらく多くの人が聞いたことのある話だと思います。

 夜中に食べると、太る

これは迷信ではなく、今では科学的にきちんと解明されています。

朝7時に起きて朝日を浴びた場合、それから15~19時間後(22時~2時)までの時間帯は、「BMAL1(ビーマルワン)」というタンパク質の一種が1日で最も増加します。

この「BMAL1(ビーマルワン)」は、脂肪分を細胞に取り込み栄養を蓄える働きをするので、この時間帯に食べたものは脂肪分となり易く、肥満の原因に繋がります。

22時から2時までの間に起きているとついつい食事をしがちです。この時間に起きているから食べたくなるので、22時、夜10時には寝てしまいましょう。

これまでの話を統合し逆算すると、朝7時に起きて、夜10時に寝る、のが最適だということになります。

 1.朝7時、目覚める
 2.朝日をすぐに浴びる →脳の体内時計をリセット! 1日が始まる!
 3.朝食を朝9時までに取る →内臓の体内時計もリセット!
 4.夜10時、寝る

お、これは、無理な生活リズムではないのでは?

子供の頃に叱られていた、早寝早起きの時間と同じです。科学的にも理に適っていたようです・・・・・・。

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とにかく、この生活リズムを定着させることが重要です。1日だけ実現しても、何の意味もありません。2週間から3か月程度で定着してきます。

朝起きて、朝日を浴びる。朝食を摂る。毎朝、習慣づけて続けることが、何よりも大切です。続けることで、胃や腸の運動や消化酵素の分泌も、食事が入ってくる時間に合わせて勝手に活発になるように変化してきます。

仕事や付き合いで寝る時刻が遅くなって、多少、睡眠時間が短くなったとしても、起きる時間を一定にすることを常に心掛けましょう。

[出典]

ハーバード大学医学部教授・根来秀行
睡眠の「新常識」 | 月刊「事業構想」2013年6月号
http://www.projectdesign.jp/201306/sleep/000582.php

順天堂大学医学部教授・小林弘幸
「太らない人は午後2時に食べる」と専門家が語る理由
http://jisin.jp/serial/%E5%81%A5%E5%BA%B7%E3%83%80%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%83%E3%83%88/diet/9249

カネボウ健康保険組合
生活習慣病を予防しましょう!
http://www.kenpo.gr.jp/kanebo/topics/meal/time.htm

大和薬品株式会社
「時間栄養学」で生活習慣病予防
http://www.daiwa-pharm.com/info/onko/453/

管理栄養士/料理研究家・植田夏代
第1回 時間栄養学を知っていますか? | サン・クロレラ健康BOOK|役立つ情報をお届けします!
http://www.health-sunchlorella.jp/shokuiku/shokuiku01/

産業技術総合研究所生物機能工学研究部門生物時計研究グループ・花井修次
生物時計研究の歴史
https://staff.aist.go.jp/s-hanai/history.html

女子栄養大学副学長/栄養科学研究所長・香川靖雄
花王健康科学研究会|Kaoヘルスケアレポートの発行 – Kao Research Council for the Study of Healthcare Science –
http://www.kao.co.jp/rd/healthcare/activity/healthcare36_01.html

作業療法士・菅原洋平
朝食をとれば昼のスイーツは脂肪にならない!?
http://ameblo.jp/activesleep/entry-11554884708.html

(平成26年5月16日 アシベズヘア@ashibehair_mnote

体内時計をコントロール――朝7時に起きて、夜10時に寝る 【科学的ライフスタイルのススメ 第1回】」への2件のフィードバック

  1. ピンバック: 夕食は、夜8時までに済ませる 【科学的ライフスタイルのススメ 第2回】 | materialize.jp

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