失敗が許されない社会なのではなく、単に希望がない?

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 平成25年版の自殺対策白書によれば、20代の死因の半数近くが自殺であり、20~39歳の各年代における死因の第一位も同じく自殺なのだという。これは世界的にも尋常なことではなく、先進七か国で唯一日本だけらしい。これを知って、自殺について色々と調べていると、「何年就活しても仕事が見つからない」だとか、「家族や集団の中に居ても孤立し疎外感を感じる」だとか、「生きることそのものに疲れてしまった」「ただただ生きることが辛い」などと訴える若者が近年は本当に増えているという社会福祉法人などのレポを多く見つけることができる。それらを受けて政府は、若年層へ向けた対策が急務だ、と語っているらしいが、「若年層への対策」とは、一体、何なのだろうか。

 政治家や官僚はかつて、若者がなぜ自殺に至るのか分からない、と恥ずかしげもなく言っていたが、「志望した企業に入れない」のではなく、「就職したくてもどこにも入れない」、非正規雇用者になるしかないことへの不安を抱かざるを得ない、こういった状況も自殺の一因として捉えられるだけのデータが揃ってきたのなら、若者の心理が分からない、で片づけていたところから、就職や勤務の問題という分かり易い要因へまずはメスを入れたらどうかと思う。もちろんそれは簡単なことではないのだが、「若者の心理が分からない」といって何年も無視してきた政府は、そろそろ責任を感じるべきだ。

 以下のような記事をみつけたが、”大人”の意見らしいと感じる。

■ では、私たちに何ができるのか?
若年層の自殺問題に対して政府は早急に手を打つ、と宣言しました。では、私たちにいったい何ができるのでしょうか? 政府の対策を待っていればいいのでしょうか? 動きの遅い政府を批判すればいいのでしょうか? 国を動かせないもどかしさから、無力感を嘆いていればいいのでしょうか?

私はこう思います。私たち大人の一人ひとりが、自らのできる小さな範囲で若者たちに良い影響を与えるよう努力を続けることではないか、と。

組織人事コンサルタントであり、心理カウンセラーである私の仕事を例に取るならば、執筆講演活動を通じて良い影響を与えるよう努力する。若年層に対して「過度に悲観しないよう」「自分が不完全であることを認める勇気を持とう」と呼びかける。さらには、私自身が自らの失敗体験をさらけ出しつつ「自分が不完全であることを認める」見本を示し続ける。それこそが、私にできることではないか、と思うのです。

20代死因の半数が自殺。私たちに何ができるか?
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogurahiroshi/20130619-00025800/

 この記事を最後まで読んでも、違和感しか残らなかった。いや、憤りを感じていたかもしれない。氏は、「過度に悲観しないよう」「自分が不完全であることを認める勇気を持とう」と若者たちに呼びかけるというが、若者たちは果たして、過度に悲観しているだろうか、自分が不完全であるということを認めていないだろうか。私はそうは思っていない。

 1998~2000年に掛けて文藝春秋で連載された村上龍の長編作品「希望の国のエクソダス」の中で、村上龍は少年に「この国には何でもある。本当にいろいろなものがあります。だが、希望だけがない」と語らせていたが、まさに、今の日本には、失敗を乗り越えて目指すべき希望が、何もないのだと私は思っている。連載当時、私は高校生で、就職する気も進学する気も遊ぶ気も死ぬ気もなかったのだが、村上龍のこの一言で、すべての納得がいった。「就職の失敗」や「進路の悩み」等で自ら命を絶った若者たちの本心は、もちろん、私には分からないが、失敗を恐れず次の成功を目指して再チャレンジするだけの希望が、一体、この国のどこにあるというのだろうか。既存の社会が受け入れないなら新たな社会を起業してやろうという、オルタナティブな人生を選ぶ若者が減ったと言われている。先に光の差さない敷かれたレールを歩み行き、脱線したら、ああ、もういいや、と、むしろこの閉塞した時代から解放されたと安堵を感じ得た若者たちばかりだったのではないかと私は勘ぐってしまう。

 いつから、低所得は悪になり、敗者になったのか。低所得でも楽しく生きられるコミュニティーは、どこへいったのか。生活保護引下げの声が高まる。自助努力、自己責任が叫ばれる。救いを失くして、希望はあるのか。「不完全であることを認める勇気」など勇気ではなく、当事者は不完全であるということを痛感しており、”次なる敗者”を切望している。日本の未来は、亡者が蠢く地獄なのか?


                  この国には何でもある。だが、希望だけがない。

 現代を予見したと評される「永遠の近未来小説」。失業率が10%に迫り、円が暴落した日本。80万人の中学生が、学校を捨てる。彼らは、ネットワークを築いてビジネスを開始し、国家との情報戦を制し巨額の資金を得て、やがて北海道に半独立国を作る。壮大なスケールで、この国の絶望と希望を描く超大型長編。

希望の国のエクソダス
村上龍・著

(アシベズヘア@ashibehair_m

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